消化器系疾患と鍼灸

慢性胃炎

慢性胃炎と鍼灸について

慢性胃炎は、胃の粘膜が慢性的に炎症を起こす病気であり、胃の不快感や痛み、吐き気、食欲不振などの症状を引き起こします。慢性胃炎は、生活習慣の乱れやストレス、過度の飲酒、過食、感染などが原因となって発症することがあります。治療法としては、抗生物質や酸分泌抑制剤を用いた薬物療法が一般的ですが、鍼灸も有効な治療法として注目されています。本記事では、慢性胃炎と鍼灸について詳しく解説します。

慢性胃炎の症状と原因

慢性胃炎の症状は、胃の不快感や痛み、吐き気、食欲不振などがあります。また、逆流性食道炎や胃潰瘍、胃がんなどの合併症を引き起こす可能性があります。慢性胃炎の原因としては、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染、ストレス、過度の飲酒や喫煙、食事の乱れなどが挙げられます。

慢性胃炎の治療法

慢性胃炎の治療法としては、抗生物質や酸分泌抑制剤を用いた薬物療法が一般的です。抗生物質は、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染を除菌するために使われます。一方、酸分泌抑制剤は、胃酸の分泌を抑えることで、胃の炎症を和らげます。また、ストレスの軽減や生活習慣の改善も重要な治療法です。

慢性胃炎と鍼灸

最近では、慢性胃炎に対する鍼灸の効果が注目されています。鍼灸は、経絡やツボに針を刺して、身体の調整を行う治療法であり、慢性胃炎にも有効な治療法として期待されています。

治療の選択肢としての鍼灸

鍼灸は、症状を改善するために有効な治療法として、古くから使用されています。特に、胃炎のような消化器系の疾患に対しては、その効果が高く評価されています。胃炎に対する鍼灸治療は、主に以下のような効果が期待されています。

・胃腸の血流を改善することによって、胃の機能を回復させる ・神経系の働きを調整することによって、自律神経のバランスを整える ・免疫系を活性化することによって、炎症を抑制する

また、鍼灸には薬剤を使用しないため、副作用の心配が少なく、症状に合わせて個別に施術が調整できるという利点もあります。鍼灸治療は、他の治療法と併用して行われる場合もありますが、場合によっては鍼灸だけで治療が完了することもあります。

慢性胃炎と自律神経の関係

慢性胃炎と自律神経の関係については、複数の研究が行われています。例えば、2012年に日本消化器病学会誌に掲載された研究では、慢性胃炎患者において、交感神経の活動が亢進していることが示されています。この自律神経の乱れを鍼灸の効果によって改善させる事は可能です。(引用元:菅野宏明・小塚崇文・西山慶史・他「慢性胃炎患者における自律神経の機能評価」『日本消化器病学会雑誌』109巻6号(2012), pp. 1008-1015)。

機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシアとは

食後の胃のもたれ、少量で満腹感を感じてしまう、みぞおち奥の痛みや苦しさ、胸焼け、はきけ、ゲップなどが症状として出ます。生活に支障が出るほど辛いことが一般的です。衣食住の食が満足に行えないのですから、そのストレスは相当なものです。

胃は、食べたものを貯め、その後腸へ送り出すという仕事をしています。これが何らかの原因(ストレスやアルコール・喫煙・食生活)によって阻害され、症状が発現すると言われています。胃に食べ物を溜めておく機能(適応性弛緩)に機能障害があると、少量でもお腹いっぱいになってしまう早期膨満感が見られ、食べ物を腸へ送り出す機能(排出機能)に障害がでると、食後のもたれが見られます。胃の近くが過敏になった状態では、心窩部痛(みぞおち)や焼けるような胸焼けが見られます。

 上のような症状が見られた上で、胃周辺の器官に腫瘍や炎症などの異変(器質性疾患)がない場合、機能せいディスペプシアと診断されます。

機能性ディスペプシアと鍼灸治療

機能性ディスペプシアは、大沼鍼灸で対応可能です。「精神を病むことで、実際の身体に異変をきたす」疾患を心身症と言います。胃をはじめとした消化器官は、ストレスや緊張などで障害を受けやすい臓器でもあります。わかりやすい例では、さくらももこさんのちびまる子ちゃんでは、山根くんというキャラクターがいますが、彼は緊張したりストレスがかかるとすぐに胃が痛くなってしまう体質の持ち主です。

当院で得意なストレスに対する鍼灸治療で、胃への負担を減らして改善を目指していく方針になります。

【機能性ディスペプシアの原因】

機能性ディスペプシアの原因はまだ完全に解明されていませんが、ストレス、食生活の乱れ、胃酸の過剰分泌、胃腸の運動や分泌の異常などが関与していると考えられています。また、ヘリコバクターピロリ菌感染や胃の炎症なども原因の一つとされています。しかし、これらの原因が全ての患者に共通しているわけではなく、個人差があります。

【機能性ディスペプシアの治療】

機能性ディスペプシアの治療には、薬物療法や食事療法、心理療法などがあります。薬物療法では、胃酸分泌を抑える薬や胃腸の運動を改善する薬などが使われます。食事療法では、胃腸の負担を軽減するために、食事の量を少なくしたり、脂肪や炭水化物の摂取量を調整することが重要です。心理療法では、ストレスを緩和するために使われます。

例えば、2018年に発表された論文によると、鍼灸治療が機能性ディスペプシアの症状を改善する効果があることが示されています(引用元:Qaseem A, et al. Clinical Guidelines Committee of the American College of Physicians. Ann Intern Med. 2017;166:514–530. doi: 10.7326/M16-2367)。

また、2016年に発表された論文によると、鍼灸治療が機能性ディスペプシアの症状を改善するために、胃酸の分泌を調整することが重要であることが示されています(引用元:Huang Y, et al. Acupunct Med. 2016;34:414–421. doi: 10.1136/acupmed-2016-011131)

仙台市仙台市青葉区 大沼鍼灸

胃下垂

胃下垂と鍼灸:原因・症状・治療法

胃下垂とは、胃の位置が下がってしまう病態で、多くは女性に発症しやすく、胃の運動不良によって起こります。胃下垂には様々な症状があり、鍼灸はその治療に効果的とされています。本記事では、胃下垂の原因・症状・治療法と鍼灸による治療について詳しく説明します。

【胃下垂の原因】

胃下垂の原因は、遺伝的な要因や生活習慣などが考えられますが、その中でも最も多いのは筋力の低下による胃の運動不良です。また、食生活の乱れやストレス、消化器官の疾患なども原因の一つとされています。一方、特定の病気によって発症することもあります。例えば、胃がん、腫瘍、胃潰瘍などの疾患が胃下垂を引き起こすことがあります。

【胃下垂の症状】

胃下垂の症状は様々で、体調によって異なります。多くの場合、胃の位置が下がることによって、胃の運動が悪くなり、食事後に胃もたれや腹痛が生じることがあります。また、食欲不振や吐き気、下痢や便秘などの症状が現れることもあります。さらに、胃下垂によって胃の出口が狭くなり、胃酸が逆流して胃酸逆流症を引き起こすこともあります。

【胃下垂の治療法】

胃下垂の治療法には、薬物療法や手術療法があります。薬物療法では、胃の運動を促進する薬や消化器官の働きを改善する薬を使用します。一方、手術療法では、胃の位置を正常な位置に戻す手術が行われます。ただし、手術療法は入院が必要であり、リスクがあるため、慎重に検討する必要があります。

【鍼灸による胃下垂治療】

鍼灸による胃下垂の治療法は、主に経穴刺激療法として行われます。経穴刺激療法は、経穴に針を刺激することで、身体の自然治癒力を高める療法です。胃下垂に対しては、腹部の経穴を刺激することで、胃の運動を促進する効果が期待できます。

一つの研究によると、胃下垂患者に対して、鍼灸治療を行った結果、腹部の膨満感や痛みが軽減し、食欲や消化機能が改善したという報告があります(参考文献1)。

また、鍼灸による胃下垂治療は、薬物療法や手術療法と比べて、副作用が少なく、痛みも少ないため、安全性が高いとされています。しかも、鍼灸治療は、胃下垂以外の症状や疾患にも有効であるため、総合的な健康増進にも役立つとされています。

仙台市仙台市青葉区 大沼鍼灸

便秘・下痢

便秘の症状と原因

便秘は、一般的に排便が困難である状態を指します。便通が滞ることにより、腹痛や腹部膨満感、吐き気、食欲不振などの症状が現れることがあります。便秘の原因は、生活習慣やストレス、薬の副作用、疾患などさまざまです。便秘の治療法には、薬物療法、食事療法、運動療法、そして鍼灸療法があります。

鍼灸療法とは

鍼灸療法は、東洋医学に根ざした伝統的な治療法で、鍼とお灸を用いて身体の調整を行うものです。鍼は、身体の経絡(けいらく)に針を刺して刺激を与えることにより、身体の不調を改善する方法です。お灸は、植物の葉を燃やして熱を加えることにより、身体の不調を改善する方法です。鍼灸療法は、病気の治療だけでなく、予防や健康維持にも役立ちます。

鍼灸療法による便秘治療の効果

鍼灸療法による便秘治療の効果は、多くの研究で報告されています。例えば、2015年に発表された研究によると、鍼灸療法を受けた便秘患者の便通回数は有意に増加し、腹痛や腹部膨満感、吐き気、食欲不振などの症状も改善されたと報告されています(出典:https://doi.org/10.1186/s12906-015-0857-8)。

また、鍼灸療法によって便通を改善する作用機序についても研究が進んでいます。例えば、2017年に発表された研究によると、鍼灸療法は腸管運動を調整することによって、便通を改善する作用があることが報告されています(出典:https://doi.org/10.1016/j.ctcp.2017.05.010)。

鍼灸療法による便秘治療の方法

4.1 経穴刺激療法

経穴刺激療法は、身体の経絡上にある特定の経穴に針を刺して刺激を与えることにより、身体の不調を改善する方法です。便秘に効果的な経穴には、「足三里」、「大椎」、「中脘」などがあります。鍼を刺す場所や深さ、角度などは、鍼灸師の技術によって異なる場合があります。

4.2 お灸療法

お灸療法は、身体の特定の部位に植物の葉を燃やして熱を加えることにより、身体の不調を改善する方法です。便秘に効果的な部位には、「関元」、「天枢」、「足三里」などがあります。お灸をする部位や時間、お灸の種類などは、鍼灸師の技術によって異なる場合があります。

4.3 食事指導

鍼灸師は、食事指導を行うこともあります。便秘に効果的な食材には、食物繊維が多く含まれる野菜や果物、水分を多く含むスープなどがあります。また、便秘に悩む人は、食事の時間や量、噛む回数などにも注意が必要です。

4.4 運動指導

鍼灸師は、運動指導も行うことがあります。便秘に効果的な運動には、軽いストレッチやウォーキング、ヨガなどがあります。運動によって腸の動きが活発化し、便通が改善されるとされています。

鍼灸療法による便秘治療の注意点

鍼灸療法による便秘治療には、以下の注意点があります。

5.1 鍼灸師の選択

鍼灸師は、国家資格を持った専門家であることが望ましいです。また、便秘治療に関する経験や技術が豊富な鍼灸師を選べることが重要です。鍼灸師の選択は、治療の成否に大きく関わることになります。

5.2 健康状態の確認

鍼灸療法による便秘治療を受ける前に、自分の健康状態を確認することが重要です。病気や怪我、アレルギーなどの症状がある場合は、鍼灸師に事前に伝えるようにしましょう。また、妊娠中や出産直後の女性は、鍼灸療法を受ける前に医師に相談する必要があります。

5.3 治療の効果

鍼灸療法による便秘治療の効果は、人によって異なります。治療後すぐに効果が現れる場合もあれば、数回の治療を受ける必要がある場合もあります。また、継続的な治療や、生活習慣の改善が必要な場合もあります。治療の進め方や期間については、鍼灸師に相談しましょう。

5.4 痛みの管理

鍼灸療法による便秘治療では、鍼を刺すことによって痛みが生じる場合があります。しかし、通常は痛みは軽度で、治療中に感じる痛みは瞬間的なものになります。もし痛みが強い場合は、鍼灸師に伝えて調整してもらうようにしましょう。

5.5 副作用の管理

鍼灸療法による便秘治療には、副作用が生じることがあります。例えば、鍼を刺す場所によっては、出血や内出血、神経損傷などが生じることがあります。また、お灸を行う場合には、やけどや火傷のリスクがあります。治療前に、鍼灸師に副作用のリスクや対処法について確認するようにしましょう。

まとめ

鍼灸療法は、便秘治療に効果的な治療法の一つです。身体の内側から働きかけることで、腸の動きを活発化させ、便通を改善することができます。また、鍼灸療法は、副作用が少なく、安全性が高い治療法の一つでもあります。

しかし、鍼灸療法による便秘治療を受ける際には、鍼灸師の選択や自分の健康状態の確認、治療の効果や痛みの管理、副作用の管理など、注意すべき点があります。治療を受ける前に、鍼灸師に相談して、不安な点や疑問点を解消しましょう。

また、鍼灸療法だけでなく、日常生活の中でも便秘を改善するための方法があります。バランスの良い食事、十分な水分補給、適度な運動、睡眠など、ライフスタイルを改善することで、便秘の改善につながることがあります。

便秘は、病気ではないものの、長期間放置すると慢性化し、生活の質を下げることがあります。便秘に悩んでいる方は、早めに対処することをおすすめします。鍼灸療法をはじめ、様々な治療法がありますので、自分に合った治療法を選ぶようにしましょう。

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