メンタル疾患、つまりこころの病気と一口に言っても種類も症状も多種多様です。こころの病気を診て、病名をくだす方法は、からだの疾患とは考え方が異なっているからです。
からだの疾患の場合、病名は臓器(内臓や筋肉など)の種類や部位、原因によって分類されることが多いのですが、こころの疾患の場合は、脳というひとつの臓器をメインに捉えており、さらに原因がわかっていない疾患が多い特徴があります。
そのために、最近では「特徴となる症状」と「持続期間」および「それによる生活上の支障がどの程度あるか」を中心に診断名をつける方向に変わって来ました。こころの疾患についてのおもな判断基準として、米国精神医学会が策定した【DSM】、世界保健機関(WHO)によってつくられた【ICD(国際疾病分類)】があり、日本でも多く用いられています。こうした診断の基準では、原因は問わないことがセオリーとなっています。
社会的なストレス・環境の状態も含めて総合的に診断することは治療方針を決めるのにとても重要です。
【うつ病】という診断がついた場合でも、ストレスがきっかけの場合もあれば、体の病気と関係していることもあります。多種多様な背景をからだから読み取りつつ、お話を伺いつつ、原因と向き合うことができるのは我々鍼灸師の強みであると考えています。