症例 20代なかば女性/自律神経失調症

※患者様から許可を頂いた症例のみを掲載しています。


同じような症状の患者が続いたため、一例を共有します。梅雨時期は身体にこたえますね。
今回の患者さんは、雨が続く6月にお見えになりました。もともと天気に体調が左右されやすいとの事。

主訴として、
・考えがまとまらない
・やる気が起きない
・首のこり
・背中のこり


上記を予約時に入力頂いていました。特に、今まででは考えられないようなミスが増えてしまった、という点では特に戸惑いがあるようです。

ネットで調べると、病院では診断や治療もイマイチ効果が無いとの記事があり、コリの症状もあったため、当院を受診された。もともと学生時代には鍼灸接骨院へ通っていたこともあり、鍼灸は馴染みがあったのこと。

問診では、主訴の中でも「考えがまとまらない」という未だかつて味わったことのない感覚に、戸惑いが強くあるとのことでした。
新しく覚える仕事も、聞いてもすぐに忘れてしまう(メモを取る必要すらなかったものも忘れてしまう)、いままでできていた仕事も手が止まってしまう事もあったようです。
また、首や背中のコリは学生時代(中学)からあるようで、つらいのは通常運転、仕事をしているうちは仕方がないと思っている、とお話しいただきました。


ご本人にお話を聞いて、今度は身体を触診し様子を見ていきます。


施術


背骨に近いところから手技でゆるめつつ、かたさが残る部分に鍼を入れていきます。今回は、脊柱脇にある夾脊穴をメインに刺入していきました。脊柱から身体へ神経が走っているため、ここの硬さは特に重要視しています。肋骨(あばらぼね)と背骨がつく部分でもあり、ここの硬さが呼吸運動を阻害します。どこが痛いわけでもないけど、だるくてやる気が起きない、という場合は多々ここに原因があるとみています。深いところですから、指圧だけでゆるめるのは至難のわざです。石灸も使って温めます。
加えて、首〜頭部のつながりもしっかりゆるめます。数カ所を浅く鍼で刺激。今回は重さが残らないよう、細めの鍼でしていきました。その流れで側頭部、顔面の額からこめかみまで、身体に意識させるよう刺激していきます。ストレスがかかっている状態が続くと、例えば眉間にシワが寄るように頭部顔面に力みが入ります。顔面は自律神経支配ですので、いずれ疲労がたたってくるわけです。見逃したくない部分です。


結果


治療後は、身体の軽さを感じるとの事。鍼の違和感も残りませんでした。表情が明るくなり、目線も合うようになっています。首まわりも動かしやすいとの事ですが、可動域の変化はそこまでありません。筋肉の強い硬さというより、普段無意識的に筋緊張が起きている証拠です。2週に1度のペースを目安に来院頂くようにお話しし、不安であれば初めの1ヶ月程度は週一できれば尚良いですとお伝えしました。



考察

脈が細く浅く、拍動も早い。手汗と足汗も少しあり、冷えが手足からお腹と背中の上部まであります。脊柱の両側に手を添えると、ほとんど指が入りません。
肩甲骨周りはかなり柔らかく、深層から固まってきているようです。こういった場合は、心理的なストレスからきている事が多いようです。特に頚部から胸部までの硬さが強く、首の可動域も狭い。胸椎と肋骨の間もギッチリと詰まっており、これでは呼吸が浅くなって自律神経にも負担がかかります。呼吸は常時行われますから、四六時中常にストレスを感じているようなものです。

「やる気が起きない」「考えがまとまらない」という症状から、ひとつに「統合失調症」を頭に浮かべました。思考や感情を統合させる(まとめる)脳の機能が障害される疾患です。症状にも様々ありますが、特に認知機能障害が特に目立つようです。「やる気が出ない」という陰性症状も見られます。
ご本人曰く、調子には波があるとの事。悪化の方に振れる可能性も少なくありませんので、念のため病院も受診して頂くように伝えます。

当院に来院後、心療内科を受診。自律神経失調症の診断を受けたそうです。もともと学生時代には鍼灸接骨院へ通っていたこともあり、鍼灸は馴染みがあったのこと。